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鳥インフルエンザ。
このことばが、どれだけの脅威を世界に与えているでしょうか。
鳥インフルエンザは2年前から国境を越えて無数のニワトリやガンに感染し、さまざまな国がウイルスを根絶するためのむなしい努力を続けてきました。
現在はまだ鳥の伝染病ですが、ウイルスが変異して、人間の聞でも感染する病気になり、世界的なインフルエンザの大流行を引き起こすのではないかと憂慮されています。
すでにテレビでは、健康な若者が病に倒れ、肺全体に感染が広がっていき、呼吸不全に陥って死んだというニュースも伝えられました。
30から50年に1回、世界的なインフルエンザの流行が起こっています。
これは、私たちの免疫システムが新しい型のウイルスを認識できないからです。
運がよければ、次にパンデミック(世界的流行)を起こすのは悪性の低いウイルスかもしれません。
でも現在見られる鳥インフルエンザウイルスがパンデミックを招く可能性が高いと考えられ、それが現実化した場合には深刻な被害が予想されます。
現在懸念を呼んでいるH5Nl型ウイルスが、「ヒ卜化」しない、つまりヒトからヒトへと感染するウイルスにはならない可能性もありますが、この可能性はみるみる縮小しています。
なぜなら、力モや二ワトリへの鳥インフルエンザウイルス感染が、世界中の広い地域に驚くべき速さで広がっている事実が判明しているからです。
アジアではすでに推定1憶2000万羽の鳥が処分されましたが、農民たちがどんなに根絶を試みても、ウイルス感染の新たな例は発生しつづけています。
05年11月までに、タイでは乳児とその祖母に感染が見つかりました。
中国では、ようやく事実の開示が始まりました。
長い間科学者が疑っていたとおり、国内の広い地域で飼い鳥にウイルス感染が広がっていることが明らかになりした。
また人間の感染例も3例報告されています。
イギリスでは05年秋、エセックス郊外の検疫施設に感染した鳥が持ち込まれると、「イギリスに鳥インフルエンザが広がっている」との見出しがたちまちのうちに新聞紙上に登場し、人間にとっての脅威とも受け止められました。
これは事実とはかけ離れた報道です。
ただし、「常に扇動的なニュースを求めているメディアによって、何でもない事実をめぐって騒ぎが過熱しているだけだ」と感じた人がいたとしたら、それも見当違いなのです。
イギリスのD医療官のことばによれば、パンデミックは「生物学的に不可避な現象」で、世界保健機関(WHO)の分類では世界の保健衛生における最も深刻な問題とされています。
深刻なパンデミックが起きた場合、経済的損失は世界経済の2%にも達すると見られているうえ、死亡率は非常に高くなる恐れがあります。
すでにエイズとマラリアに困窮しているアフリ力大陸では、インフルエンザのような呼吸器疾患のパンデミックに対応することは不可能でしょう。
日本では2つの大きな危険があり、それぞれが別個に検討される必要があります。
第1に、冬場にシベリアからさまざまな種類の渡り鳥が通ることから、日本国内の鳥がH5Nl型のウイルスに感染するリスクがあります。
日本では早期発見のために優れた監視態勢が整っていますから、ウイルスがやってくれば、ただちに専門家たちによって明らかにされるでしょう。
放し飼いで鳥を飼育している農家、それに鳥類保護区の管理者にとっては深刻な事態になりますが、まだ現実にはなっていません。
次に、何よりも大きく懸念されるのが、ヒトインフルエンザの大流行が起きるかもしれないということです。
そして、H5Nl型ウイルスによってパンデミックが引き起こされる可能性は非常に高まっています。
アジアに生息する5億羽を超える鳥たちの中にウイルスの温床があり、あと数回遺伝学的な変異が起こっただけで、ヒトの間で感染するようになる恐れがあります。
科学者の聞には、危険なウイルスが発生した場合に最初の火花を消し止めて拡大を阻止することは、現実には難しいという悲観的な見方が広がっています。
ここでは、3つのテーマを取り上げます。
1つは、鳥インフルエンザウイルスとは何か、またH5Nl型ウイルスがなぜパンデミックになりうるのかを説明します。
2つめは、鳥インフルエンザがタイなどの国でどのように広がったか、なぜ貧しい国の感染を制圧するために適切な措置を講じたり、支援をしたりすることができなかったかを見ていきます。
今も世界はこうした過去の過ちを償おうとしていません。
また、パンデミックが起きた場合に職場や家庭でどのような影響が出るか、そして自衛のためには何ができるかを解説します。
インフルエンザの症状を抑えて自分の命を守るために何ができるかを知っておくことが非常に重要だと、取材に応じてくれた多くの医師たちも断言しています。
パンデミックに怠った場合、インフルエンザ感染を避けるための特効薬は、ありません。
でも、家の中で基本的な対策を実施することで、感染のリスクを大きく抑えることができます。
マスクに効果はあるのか、隣の人がくしゃみをしたら何をすればいいのか、子どもや他の家族が感染したら、どのように看病してあげたらいいのか、といった疑問に、世界中の専門家がわかりやすく答えてくれました。
もっとも大切な対策のひとつは、インフルエンザらしき症状が出た場合、すぐに仕事を休み家で休養することです。
症状が出ても、仕事をしたり、薬局に行ったり、食料品を買いに行ったりしないようにしましょう。
ここを読んだ後で、いたずらに鳥インフルエンザに恐怖心を抱かす、起こりうるパンデミックに対してもパ二ックに陥ることなく冷静に対処してほしいと願っています。
鳥インフルエンザ大涜行の危機に備えて鳥インフルエンザ大涜行の危機に備えて広がる新型ウイルスの脅威広がる新型ウイルスの脅威H5N1型ウイルスは、過去に例を見ないほど広範囲に地理的拡大を見せており、しかも多くの動物種に感染しています。
すでにネコ科の大型動物やヒトにも感染例があり、死亡率は50%に達します。
私たちの不安にさらに拍車をかけているのが、第1次世界大戦直後に大量の犠牲者を出したスペインかぜも、鳥インフルエンザウイルスがほかの動物種に広がったのが原因だったということです。
1918年以降、パンデミックを引き起こすウイルスが発生するチャンスは増えました。
人口が急激に増え、人口密度の高い都市に集中するようになったからです。
エアコンの効いた室内の生活、混んだバスでの通勤、映画館や劇場、無限に大型化する飛行機などは、インフルエンザウイルスの感染が起こりやすい条件をつくり出しています。
ウイルスに頭脳があり、戦略を練ることが可能だったとしたら、空気、食べ物、あるいは水を媒介に広がることを選択するでしょう。
実際、ほとんどのウイルスは呼吸呼吸し、食べ、飲む必要があるという事実を利用して進化してきたようなのです。
もちろん、実際のウイルスは計画を練ったりはしません。
その代わりに、急速に変異できるという特徴を生かして、人間の行動パターンの変化をうまく利用するのです。
私たちが生活様式を変えると、ウイルスもそれに適応して進化していきます。
ウイルスには2種類あり、それぞれ違った戦略をもっています。
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